私が普段聴いているプレイリストから、お気に入りの楽曲やミュージシャンなどをピックアップし紹介していく『私のおすすめミュージック』。
第2回はシンガーソングライター『黒木渚(くろきなぎさ)』さんです!
独特の世界観を確立している唯一無二のシンガー。そんな彼女の魅力に迫りたいと思います。
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『黒木渚』について
『黒木渚』さんは1986年4月19日生まれで宮崎県出身のシンガーソングライター。2013年からLastrum(ラストラム)に所属。自身の楽曲の全作詞作曲を手掛けています。
文学的で秀逸な歌詞が彼女の世界観を表すポイントで、大学時代に教授を目指すほど文学にのめり込んでいたことから、文学の造詣が深くその知識が活かされた歌詞が特徴です。
ギターを学んだもの大学時代と意外と遅いですが、その後学生の間にライブハウスデビューしバンド結成まで至ってるので短期間で素晴らしい吸収力…。
バンド編成~ソロシンガーへ
元々は『黒木渚』という彼女の名を冠した3ピースのロックバンドでした。
2010年に結成し当初は福岡で活動しており、ファーストシングル『あたしの心臓あげる』は九州限定でのリリースであったにもかかわらず、有線インディーズチャートで1位を獲得するなど話題を集め全国発売に至りました。
血みどろのPVが衝撃!
その後拠点を東京へ移し1stミニアルバム『黒キ渚』、2ndシングル『はさみ』をリリースし精力的に活動するものの、バンドは1年で解散。理由は彼女自身が「もっと良いものが作りたい」と思ったから。
ポジティブで遊び心を失わない集団からしか、クリエイティブなものは生まれてこない、と私は常々思っています。けれど黒木渚はいつの間にかそうじゃ無くなってしまっていた。その時に私達の限界を感じました。
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一緒に上京してきた仲間を切り捨てるのはかなりの決断。お互い辛かったでしょうね……。それでも結果的に間違いではなかったと思いますよ。
実際にソロとなり『標本箱』『自由律』2つのアルバムと、シングル『虎視眈々と淡々と』『君が私をダメにする』『ふざけんな世界、ふざけろよ』『灯台』などを発売し数々の名作を生み出していきます。
活動休止からの文筆活動そして復活へ
しかし2016年に発症した【咽頭ジストニア】の治療のため活動休止に入ります。
——そして彼女のもう一つの顔が小説家。2015年に連作小説『壁の鹿』で小説家デビューを果たし、その処女作が2017年に講談社より発売されました。
この活動休止中に同作品と小説『本性』が刊行。執筆活動に専念します。
その後2017年9月にシングル『解放区への旅』をリリースし復活に至りました。
以降彼女の発声の仕方も変わったようで、声が出しづらいのかなととても心配でしたが相変わらず素晴らしい才能は健在。
『黒木渚』の世界観がわかる楽曲
黒木渚の楽曲と言えばファーストシングルの『あたしの心臓あげる』もそうですし、ちょっとダークな印象が強く衝撃を受ける方も多いかと思います。
具体的な表現や言葉遊びでよりリアルなストーリーが浮かび上がる。まさに小説を読んでいるような、映画を観ているようなそんな世界観が楽しめます。
彼女の曲にどっぷりつかると、今まで聴いてきたあらゆる曲がとたんに安っぽく陳腐に思えてしまう。天才です。
自身のドロドロした感情を綴った『カルデラ』
個人的に一番好きな曲がこの『カルデラ』。バンド時代の1stミニアルバムに収録された一曲です。
実はこの曲は黒木渚さん自身の実体験に基づいて書かれた曲。
それはとっても重い話なんですが、彼女には腹違いの姉がいてその方に暴言を吐かれたことが切っ掛けだそう。そのときの怒りやドロドロした感情がそのまま表現されています。
——あなたが体内に宿したものにさえ私は幸福を祈ったよ。
ブラックな歌詞が深すぎる。生々しさが伝わる言葉選びが本当に秀逸です。
『はさみ』で表現した大切な人との関係
この曲は2013年にリリースした2ndシングル。私が彼女の存在を意識したのはこの曲からでした。
ライブハウスでこの曲のポスターをよく目にしていたし「はさみ」ってワードちょっと怖いなとか印象的だったのを今でも覚えています。
鋭くて冷たい『はさみ』の印象を残しつつも、違う見方も発見できた一曲。交差する二つの刃を相手と自分に例え、その刃を相手に向けることもできれば重なり合って一つになる事も出来るんですね。
過激な内容でメッセージ性の強い『ウェット』
2014年にリリースされた1stフルアルバム『標本箱』に収録された一曲。この曲を簡単に説明すると「恋人に家族がいて相手を殺して自分も死んだ」という内容です。
男女の最悪の結末を素材に「死んだら楽になると思っていたけれど、全然成仏できない」という自殺に対しての否定的なメッセージも含まれています。
この楽曲を元に岡田まりさんが監督を努め短編映画化もされました。(動画参照)
ちなみに彼女自身が不倫していたとか修羅場ったわけではないようですww
『黒木渚』の楽曲は光も与えてくれる
一見アングラ的な色物系に見られがちな黒木渚というシンガー。しかし闇と対をなす光射す系の楽曲も素晴らしいのです。
優しい歌が多すぎる世の中で、もっと本音で歌いたいから尖ったものを発信する。そういった正直な気持ちの表れで、決して暗い曲を書くことが彼女の目的ではないんですよね。
『革命』で気高く美しく決意表明
バンドからソロになり一発目の作品『標本箱』に収録された渾身の一曲。
【強い女性=ジャンヌダルク】をテーマにした伸びやかな歌声が響く開放感溢れる楽曲です。ソロになる彼女の決意表明的な曲であり、これから戦いに出る自分とジャンヌダルクを重ねています。
20分くらいで完成したという気合の入った一曲。ライブで聴くと鳥肌もんですよ!
『骨』のように死んでも残るものがある
こちらはバンド時代の一曲。『骨』というインパクトのあるタイトルと、歌詞通り前衛的な内容が印象的です。
——死ぬ時に自分の人生に点数をつけて墓石に掘ろう。
今ある人生を全力で楽しんで、死んだ後にお酒でも飲んで墓石を眺めながら、勝った負けたを楽しく話したいという想いが込められています。
曲調は明るく、「死」というネガティブなイメージを払拭するようなポジティブな一曲です。
死んでも残る骨のように、失われないものがある!
人生哲学を詰め込んだ『虎視眈々と淡々と』
こちらはライブでは鉄板の2015年リリースの3rdシングル。
あまり浮き沈みのない自身のフラットな性格をテーマにした一曲。タイトルにもなっているダジャレのような面白い言葉遊びが印象的です。
——嘘をついてついてついてつきまくれ、染まらない何かが本物だ。
この曲の歌詞には彼女の人生哲学が存分に落とし込まれているのもポイントです。
『解放区への旅』で新たなスタートを
この曲は活動休止から復活を遂げた時にリリースしたシングル曲。
闇を抜けて解放感を得た彼女の清々しさが現れ、難しい言葉に頼らずシンプルに仕上げられた壮大な一曲です。
音での感情・心情表現も抜群です!
私小説から生まれた『檸檬の棘』
2019年にリリースした3rdアルバム『檸檬の棘』のリード曲。喉の不調から復帰後も思うような状態ではなかったことから、アルバム自体様々な葛藤の中で作り上げた作品です。
また父親との確執などを綴った同名の私小説も存在しており、
——世界が壊れた記念に 檸檬の苗を植えた。
という一節からメロディが付いていきました。
この小説を書き終えたことで当初は物々しかった曲調が明るく変化したそうです。
どうでもいいけどいつも彼女の美脚に目を奪われる。カモシカのような足ってこのことね!
まとめ
いかがでしたでしょうか?紹介しきれなかったですが数々の素晴らしい楽曲を生み出している黒木渚さん。そんな彼女が過去にこんなことを言っていました。
「私は言葉の組み合わせが得意なだけであって、文学的な部分は人類が使い古してきた部分であり、自分のオリジナルではない。」
——自分の持っているオリジナル(才能)は声しかない。
それゆえに「自分の声が大好き」と話されているのを聞いて、私自分の声が大嫌いだったんですけど、それしかないんだなと思ったら「どうしたらそれを愛せるかな?」ってちょっと考えてしまいました。
2016年に一度声を失っている彼女だからこそ、より一層その大切さを実感しているんでしょうね。
彼女の言葉ってひとつひとつが深くて、単細胞の私にいろいろな想像力とか考える力みたいなのを与えてくれるんです。
いちミュージシャンとしてだけでなく、人間としてもリスペクトできる方だと思います。
そんな素晴らしいクリエイター『黒木渚』さんを紹介しました。それでは次回のおすすめミュージックもお楽しみに!
出典:www.kurokinagisa.jp