皆さんは、双極性障害をご存知でしょうか?
いわゆる「躁うつ」や「気分障害」などと呼ばれる精神疾患で、躁状態と鬱状態を交互に繰り返す症状が特徴です。
躁状態の時には思わぬ行動に出て暴走する場合もありますが、人によって症状の波は様々。軽い状態だと自分も周りも気づかずに悪化してしまう可能性もあります。
また鬱病と間違えて診断されることも多く、再発率も高いため完治が難しい病気です。
私は27歳の時にこの双極性障害と診断されました。
それから6年以上が経過し現在は症状も安定しています。不安定さを感じることはゼロではありませんが、悪化することもなくなんとか上手く付き合えているように思います。
今回はそんな私の備忘録として、実際に経験してきた症状や向き合い方についてまとめています。またこのような症状に苦しむ方の参考になれば幸いです。
私が経験した双極性障害の症状

まず双極性障害についてざっくり説明したいと思います。
双極性障害とは憂鬱で気分が落ち込む鬱状態と、気分が高揚し活動的になる躁状態が交互に現れる気分障害です。遺伝要因が80%と、遺伝傾向が強い病気です。
さらに以下二つに分けられます。
- 双極I型障害:うつ状態に加え、激しい躁状態が起こる
- 双極II型障害:うつ状態に加え、軽躁状態が起こる

ちなみに私は「II型」。
鬱病と間違えられることも多いようですが、実際には全く違う疾患で治療方法も異なります。
以下では私が経験した症状をまとめました。
※あくまで個人的な傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
鬱と軽躁の無限ループ


私はⅡ型の双極性障害であり鬱状態と軽躁状態を交互に繰り返しました。
割合としては気分が落ち込みがちの日が圧倒的に多く、その後早ければ数週間、遅くて数ヶ月後に突然目の前がパッと開けたように気分が高揚し活発に行動する時期が訪れます。
この症状が入れ替わる時期や鬱や躁の度合いは人それぞれですが、基本はこのような繰り返しになると思います。
鬱期は(死にたい…)や(消えたい…)といったネガティブな思考はもちろん、悲しくもないのに涙が出たり、理由がないのに辛くて苦しくて絶望的な気分が続きました。
一方、躁状態のときは元気そのもの。意欲的になり仕事も捗るため、鬱期を挽回すべく限界突破も厭いません。
そうやって意図せずとも感情に振り回される日々が続きますが、「自分は鬱病だろう」と思い込み躁状態がダメな症状とは夢にも思いませんでした。
さらに私はII型で軽躁ということもあり、周囲からも(なんかいつもより元気だな~)くらいにしか思われていなかったようです。
躁状態の波に乗り暴走


双極性障害においては、気分が高揚する躁状態がとても厄介です。
辛い鬱期のあとに「大丈夫かも」という安心感を与え深刻な状態から目を逸らされてしまうため、気づくのも治療に踏み出すのも遅れてしまいます。
ちなみに私が躁状態のときはこんな感じでした。
- 仕事がめちゃくちゃ捗る!消極的が積極的に!
- 良くも悪くもアイディアが沢山湧いてくる!
- 夜寝なくても全然平気!むしろ寝るの勿体無い!
- 人見知りなのにめちゃくちゃ喋る!
- インドア派の私が外出しまくる!セミナーとか参加し始める。
- 誘われるのは嫌なくせに自ら友人たちを集めて飲み会!
- なんの根拠もないが自信が満ち溢れる!
- お金がないのにネットで買い物しまくる!
- 怒りが収まらないことがある!
など…
鬱状態のときは何も手に付かない分、躁状態になると活発に動けるため「この瞬間にあらゆることを頑張っておかないと!」という思考になっていきます。
もはや待ち遠しくて仕方なく、気付けば「鬱が来てもしばらく我慢すれば大丈夫!」と波乗り状態に…。



鬱から解放してくれる躁状態が楽しみで仕方なかった…。
結局は再び安堵から鬱期で突き落とされるので悪循環を繰り返すことになります。
ハイになるほど鬱状態は重い


しかしこの躁状態には裏があります。
それは——、躁状態が激しいほどその反動で鬱状態も激しいということ。
躁状態の時にハメを外しすぎると、鬱がめちゃくちゃ重くなるのです。
前項にあったように躁状態を完全に楽しんで波乗り状態だった私は、それを繰り返すごとに症状が重くなり、ある朝目覚めた瞬間から絶望感に苛まれるように…。
やがて布団から起き上がる事すら困難になり、それまで仕事を休むことなんてなかった私が出勤できなくなり末期状態に突入です。



そもそもこの時点で仕事を3つ掛け持ちして体力的にも限界だよね。
鬱状態になれば掛け持ちなんて無理なことは目に見えていますが、躁状態の時は後先のことは考えません。調子に乗った末路です。
何一つ希望を持てなくなり、鬱状態の私の心は「無」になりました。
躁鬱の切り替わりが爆速に


症状がかなり悪化してからは鬱から躁状態への切り替わりが早くなり、朝起きてから寝るまでの間だけで気分の波が変化するようになりました。
このような症状に「日内変動」というものがあり、鬱病の方に多いようなので私の場合は定かではありませんが自覚としてハッキリとありました。
例えば私の場合、
- 朝:絶望的な気分で目覚める
- 午前中:気分が落ち込み行動が鈍る
- 昼過ぎ:徐々に元気になる
- 夕方~夜:活動的になる
この無限ループになります。



短時間で上がり下がりを繰り返すと本当に疲れる。
朝から始まる仕事はまともに出来る状態ではないため、遅れた仕事は夜に仕上げたり翌日の仕事を前もって進めておくようになりました。
しかしほとんど寝ていませんから、症状だけでなく睡眠不足からの不調も追い打ちをかけます。最終的には寝たくても眠れなくなり不眠症も併発です。
双極性障害とどう向き合っていくか?
これまでの私のような症状により、辛く苦しい毎日を送っている方は沢山いると思います。
しかし双極性障害は再発率が高い病気と言われており、私の場合は主治医から【90%以上が再発する】と教わりました。
私自身もこの病気と向き合いはじめてから5年以上が過ぎましたが、いまだに気分の上がり下がりを実感することはあります。
ですから「もう大丈夫かも!」と思っても油断せずに、治療は長い目で見ていかなければなりません。
しかし人によってはある程度ボーダーラインが分かるようになるので、自分にブレーキをかけることで完全とはいかずともコントロールすることは可能ではないでしょうか。
私自身少しでも危うさを感じた時は無理をして踏み込まないようにしたり、あとから自分の行動を振り返り反省しながら生活するようにしています。
その効果あってか当時のような激しい浮き沈みはなくなりました。
人によって治療方法も違いますし、どのように向き合うことが正解なのかはわかりません。ですが心がけ次第でも予防や悪化を防ぐことは出来ると思います。
気分を一定に保つ


まずどうにかしなければならないのが気分の波。特に気分を高揚させる躁状態に覚醒してしまわないように気分を一定に保つことが大切です。
躁状態の時には「折角楽しいのに?」と疑問に思うかもしれませんし、私も正直不満でした。しかしそれが双極性障害の恐いところでもあります。
人間だからテンション爆上がりして楽しみたい時だってありますが、そんな時こそ自分を客観視して疑っていけるようにしなければなりません。
躁状態を楽しみにしていた頃の私のように波乗りしてしまうと、その後の鬱状態もより耐え難いものになってしまいますから、元気だからと言って活発に活動しすぎたり頑張りすぎないように気を付けましょう。
自分の病名を知り理解する


精神科あるいは心療内科へ行って、自分の病名を知る。知ったからと言って終わるわけではないものの、個人的には不安が安堵に変わる瞬間ではありました。



場合によっては違う病気が隠れている可能性もあり!
私もずっと鬱病だと思い込んでいたため「双極性障害」と言われたときは意外でしたが、主治医の先生からの説明を聞いてとてもしっくりきたのを覚えています。
時々元気になるという部分にずっと引っかかっていましたし、そのせいで確信が持てず「大したことないのでは?」と簡単に鬱を疑う自分を情けなく思っていました。
診断結果が出てからは決してすぐに受け入れて前向きになれるわけではありませんが、再発率も高く完治が難しいため一生付き合っていくつもりで向き合う覚悟が必要です。
一生なんて重たいし受け入れ難いのは当然です。ですが悲観していても仕方ないというのが結論でした。
徐々に理解を深め受け入れていくためにも、躊躇するより早め早めの行動が吉だと思います。
投げ出さずにしっかり治療する


病名さえ分かれば治療方針も決められます。私の場合はカウンセリングを受けながら投薬治療でした。
薬の効果はというと最初たまたま躁状態と重なり「めちゃくちゃ効いてる!」と、今思えば勘違いをしていました。先生や看護師さんも否定はせずとも笑っていましたww
実際には副作用のリスクもあるため少しずつ量を増やしていき、じわっと効いているのかな?程度。ですが数ヶ月も立てば当初よりマシになっているのは明らかでした。
治療薬も治療方法も症状によって様々ですが、いずれにせよ継続していくことが大切です。
症状が改善するまで時間がかかるので効果がないと感じ通院や薬を止めてしまう方もいるようですが、特に薬は勝手に止めてしまわないようにしましょう。
合わない時は正直に先生に伝え量を調整したり変えてもらうことをオススメします。
状態が良くなると寛解状態となり薬に頼らなくなる人もいますが、何度も言うように再発率が高いので続けた方が良いという場合もあります。



ちなみに私は現在薬の服用はしていません。
あとは主治医の先生と喧嘩して通院しなくなるパターンも多いようです。長い付き合いになるので信頼できる先生を見つけることも重要ですね。


環境や生活改善も効果的


私の場合は投薬治療以外にも環境や生活改善も重視しました。
明らかに不規則な生活とストレスの多い職場環境だったため、主治医の先生からも生活改善や仕事を減らしたり休むことを推奨されました。
しかし仕事に支障をきたすことは絶対に嫌だったので、それでもしばらく仕事は続けることに…。



無駄なプライドってやつです。
ところがそんな状態を続けながらでは思うように回復はできず、調子いいなと思ってもストレスの根源がなくならなければ安定が長続きしません。
変えることに否定的だったものの、何かを変えなければ劇的な改善は見込めないことに気づきました。
私は仕事を大幅に減らし規則正しい生活へシフト。できるだけストレスを感じないようにして、必要最低限のお金を稼ぐことを重視。
そうしていくうちにまず徐々に日内変動はなくなり、躁鬱の波も安定していきました。個人的には薬での治療よりも効果的だったように思います。
変なプライドには縛られず自分の弱さを認めることや、その時点での生活を見直すことはとても重要です。


双極性障害でも幸せになるための方法
昔ほどではないかもしれませんが、心の病を患う人を白い目で見たり、あれこれ噂の的にしたり、理不尽な態度をとる人がいまだにいます。
頭ごなしに説教したり、たるんでいると無理やり頑張らせようとしたり、休職を決断したとしても周囲からの理解は得られづらく、わがままな選択と思われることも…。
ただ健常者にハッキリと証明する術がないため病気かどうかも疑わしく思われたり、誰かに皺寄せがいき迷惑がかかるという部分では頷けるところもあります。
ですが患った人にしか分からないこの苦しみはどうしたら伝わるのでしょうか?
優先すべきは自分自身


きっとこれからも100%の理解は得られないと思います。そう考えた時に、理解を求めて奔走していたら人生無駄にするなという答えが自分の中に生まれました。
分かってくれる人はいる。でも分からない人には分からないのです。理解を求めることが目的になった瞬間から、多分私は一生悩み続けるなと思いました。
自分の気分を伺いながら生活する私たちにとって優先すべきは自分自身。実際他人の顔色を伺う余裕なんてないのですから、無理に気を遣う必要なんてありません。
これからまだ先の長い人生の中で負担を抱えながらストレスフルな毎日をおくり続けるよりも、振り返って良い人生だったと思えるような日常や環境を作り上げたいと思いませんか?
それは理解を求めることではなく、幸せを求めていくということです。
これまでは常に自分に鞭を打ち結果にこだわり誰かと比べてばかりの毎日でしたが、素直にやりがいや楽しいと思えることを求めていくようになるとストレスは断然減りました。
自分を大切にすれば心に余裕も生まれ、自然と他人へも配慮できるようになるはずです。
人生を楽しむための素材集め


よく「生きるのに理由なんていらない」という人がいます。それを深く考える人は少ないと思いますが、病気になって苦しみ初めて疑問に思うのです。
双極性障害や鬱病などを患う人は、症状が重いときは間違いなく人生が辛い。
私もそんな状態でしたから、生きるのに明確な理由が無ければ生きることに魅力や価値を感じませんでした。だからこそその理由付けが未来への希望となり、生きる意味となるのです。



私からしたら勝手なこと言うな!
ですから今でもどんなに小さなことでも夢や目標にしています。
それは漠然と「旅行に行く!」とか「宝くじを当てる!」とか、叶っても叶わなくても良いようなことだったりしますが叶えばやはり嬉しいのです。
私は多分叶えるのは無理だろうと思うようなことも手帳にごちゃごちゃメモしています。
時々見返して想像しながらワクワクしたり、忘れかけのことでも突然きっかけやチャンスが巡ってきて「なんか引き寄せた気がする〜」と勝手に楽しんでいます。
人生を楽しむことが重要でたくさんの夢や目標はそのための素材にすぎません。
気楽に「叶ったら嬉しいな〜」程度にとどめておき、自分にとって悪いものならポイっと捨ててしまう潔さも大切です。
まとめ
双極性障害は人の感情を操り日常を絶望に変えてしまいます。これが壁になってあと一歩踏み出せないことも、人よりも出来ないと感じることもあります。
ですが幸せになれないわけではありません。
そんな自分もしっかりと受け入れて向き合っていくこと。そして周りが押し付ける価値観や常識にとらわれず、自分にとって大切なことを優先してください。
自分の心に良いことを自分で選択していきましょう。私は終わりではなく始まりだと思っています。
そしてこの瞬間も悩んでいるという方は、溜め込まずに早めに行動することが大切です。誰かに頼ったり病院へ行くことも考えてみてください。